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水道事業紹介

東村山浄水場高度浄水施設 事業評価

目次

  1. 1 事業の概要
    1. 1−1 事業目的
    2. 1−2 事業経緯
    3. 1−3 事業概要
  2. 2 事業を取巻く状況
    1. 2−1 東村山浄水場の浄水処理の現状
    2. 2−2 社会的ニーズ(お客さまの意識)
    3. 2−3 水質基準等の強化・拡充と浄水処理への対応
    4. 2−4 国における高度浄水施設整備促進の取組
  3. 3 事業の定性的効果
    1. 3−1 より高いレベルでの安全性の確保
    2. 3−2 おいしさの向上
    3. 3−3 お客さまニーズへの対応
    4. 3−4 水道水に対する信頼性の向上による社会全体への貢献
  4. 4 コスト縮減及び代替案立案等の可能性の検討
    1. 4−1 コスト縮減方策
    2. 4−2 想定される代替案
  5. 5 事業の費用対効果分析
    1. 5−1 費用と効果[便益]の考え方
    2. 5−2 分析結果
  6. 6 水道事業ガイドラインにおける業務指標から見た改善効果
  7. 7 対応方針

1 事業の概要

1−1 事業目的

 利根川水系を水源とする浄水場では、流域河川における原水水質の課題を抱えており、かび臭原因物質や陰イオン界面活性剤、消毒副生成物等、様々な水質問題への対応を迫られてきている。
 本事業は、お客さまに、より安全でおいしい水を供給することを目的に、東村山浄水場において取水する利根川水系の原水全量について高度浄水処理できるよう、高度浄水施設整備を行うものである。

1−2 事業経緯

 東村山浄水場では、夏場のかび臭の発生や冬場に高濃度となるアンモニア態窒素など、利根川水系の水源水質悪化に対応するため、高度浄水処理を導入することとした。
  高度浄水処理の導入は、概ね10年以内に達成すべき施設整備長期目標のひとつに設定されるとともに、中期経営計画である「東京水道経営プラン2004」の主要事業に位置付けられており、長期的な視点から計画的に整備することとしている。

東村山浄水場における高度浄水処理導入の経緯
平成16年 3月 東京都水道事業変更認可(高度浄水施設整備)
(厚生労働大臣認可)
平成16年11月 工事着手

1−3 事業概要

(1)工事計画

ア 導入規模  日量最大 88万m³

イ 処理フロー
オゾンと生物活性炭による処理を基本とする。
原水取水→凝集沈でん→オゾン処理生物活性炭処理→砂ろ過→送・配水
注)太文字部分が、高度浄水処理導入により追加となる部分

ウ 建設位置
東村山浄水場内(東京都東村山市美住町二丁目20番236号)に建設する。

(2)事業費
 300億円(見込み)

(3)工期
 平成16年11月工事着手、平成20年度完成予定

2 事業を取巻く状況

2−1 東村山浄水場の浄水処理の現状

(1)東村山浄水場の原水水質汚濁の現状
  東村山浄水場の利根川水系原水は荒川の秋ヶ瀬取水堰で取水しているが、朝霞浄水場のデータより荒川の原水水質をみると、流域の下水道整備等により、近年、アンモニア態窒素については下降傾向が見られるものの、水質が良好な多摩川上流部と比べると、依然高く、良好な状態まで改善されてはいない。
 また、かび臭原因物質の2−メチルイソボルネオールについては、上流の支流河川における水質状況により、年によって大きく変動があるが、比較的高い濃度で推移しており、トリハロメタン生成能については、未だ横ばい傾向が続いている。
 今後の原水水質については、下水道普及率は年々増加しているものの、現在の下水処理方式(一般に二次処理)では、トリハロメタンのもととなる物質の残存や、窒素・リンなどの汚濁物質を完全に除去することが困難なことによる、かび臭原因物質を排出する藻類の増殖など、多くの課題が残されており、急速な改善効果は期待できない。

図 原水水質比較
(平成10年度〜平成16年度)

グラフ:アンモニア態窒素(年間最大値) グラフ:2−メチルイソボルネオール(年間最大値) グラフ:トリハロメタン生成能(年間最大値)※トリハロメタン生成能については、平成15年度までのデータである。また、採水場所は浄水場の各取水地点となっている

(2)通常処理系(粉末活性炭処理)の限界
  東村山浄水場は、現在、利根川水系を原水とする日量88万m³を処理可能な通常処理施設と多摩川水系を原水とする日量38.5万m³を処理可能な通常処理施設にて構成されており、両施設にて処理された水は、配水池で混合し、給水している。
 当局では、順次高度浄水施設の整備を進めてはいるが、その整備には一定の時間を要する。そのため、整備が完了するまでの間であっても、独自の水質目標の達成を目指し、できる限り高度浄水処理された水と同等の水質に近づけるためには、粉末活性炭の注入が不可欠となっている。
 しかし、粉末活性炭による処理も一定の効果はあるものの、当局が導入している高度浄水処理に比べると、汚濁物質の除去効果が低く、また、粉末活性炭ではアンモニア態窒素を除去できないため、「カルキ臭」が残存してしまう。
 一方、施設の運転面においては、降雨や渇水時など河川の水質変動が著しい時は、その変動へ的確に追随することに苦慮するケースもあり、厳しい対応を余儀なくされている。さらに、長期間にわたる注入や、高い注入率での処理を行うと、ろ過水への粉末活性炭の漏えいが懸念されるため、ろ過速度を低下させたり洗浄の頻度を上げる必要があり、処理能力の低下につながるなどの影響がある。
 また、注入量の増加に比例して、浄水処理過程での汚泥量が増えるため、排水処理への負担が増し、発生土処分費や環境負荷の増大にもつながる。

2−2 社会的ニーズ(お客さまの意識)

 平成16年11月に都の浄水場としては3箇所目となる朝霞浄水場の高度浄水施設が稼働し、通常処理水との混合ではあるが、区部のほぼ全域と多摩地区の一部に高度浄水処理された水を供給できるようになった。
 しかし、平成17年8月に実施したインターネット水道モニターアンケートによると、「飲み水としての水道水の満足度」では、61.1%の方が満足という意向を示しているのに対し、依然として、31.8%の方が不満を感じているとの結果を得た。
 また、東村山浄水場の給水区域に在住するモニターに限った場合においても35.2%の方が、飲み水としての水道水に対して不満を感じていることがわかった。
 なお、不満の理由としては、「水道水がおいしくないから」や「水道水の安全性に不安があるから」が多く選択されている。
 一方、「より安全でおいしい水の供給」に向けた取組として、今後の高度浄水処理の導入に関する質問に対しては、93.6%の方から導入を望む回答を得た。
 これらのことから、区部のほぼ全域と多摩地区の一部に高度浄水処理水が供給されるようになった現状においても、未だ多くのお客さまは水道水に不満を持ち、より安全でおいしい水を求めていることがわかる。

[平成17年度第2回水道モニターアンケート結果−水源事情と安定給水について−]

  • 飲み水としての満足度
    「不満である」 (9.1%)  
    「どちらかといえば不満である」 (22.7%) 合計31.8%
    「どちらかといえば満足している」 (47.3%)  
    「満足している」 (13.9%) 合計61.1%
    その不満理由としては、(複数回答)
    「水道水がおいしくないから」 78.6%
    「水道水の安全性に不安があるから」 41.4%
  • 今後の高度浄水処理の導入について
    「料金が少々上がっても積極的に導入を進めるべき」 (16.1%)  
    「料金が上がらない工夫をしながら、順次、導入を進めるべき」 (77.5%) 合計93.6%
    「国の水質基準を満たしているのであれば、導入の必要はない」  4.8%
  • 水道水に期待するもの(複数回答)
    「安全性」 94.5%
    「常に安定した給水」 81.1%
    「おいしさ」 60.7%

2−3 水質基準等の強化・拡充と浄水処理への対応

 近年、報道などにおいて、水道事業における様々な水質問題が取り上げられ、水源河川の汚濁物質や水道水の水質に対する関心が高まってきている。
 一方、水道法に基づく水質基準は、昭和33年に制定されて以来、科学的知見の集積に基づき、適宜改正が行われてきた。特に、平成4年の改正においては、基準項目が大きく拡充されるとともに、浄水水質の管理目標として水質基準を補完する項目が設定さるなど、全面的な見直しが行われた。
 その後、新たな消毒副生成物の問題や、クリプトスポリジウムなど耐塩素性の微生物による感染症の問題が提起されるなど、更なる水道水質管理の充実・強化が求められており、また、WHO飲料水水質ガイドライン改訂までの経緯を踏まえ、水質基準等の抜本的な見直しが審議された。
 こうして、現在の水質基準は、従来から問題視され、基準に位置付けられているトリハロメタン等に加え、新たに臭素酸、ジクロロ酢酸、アルミニウムなど13項目を基準項目に取り入れるなどの大幅な改正を図り、平成16年度から施行されている。
 このように、近年、水質基準等の強化・拡充は数次にわたり行われており、また国では、水質基準について、最新の科学的知見に基づき常に見直しを行うよう、必要な対応を図るとしていることなどから、今後もこのような状況は続くものと見られ、事業者としても基準強化等に対し、適切に対応することが求められている。

2−4 国における高度浄水施設整備促進の取組

 厚生労働省においては、安全でおいしい水を確保するために、水道原水の水質保全、水道の水質管理の充実及び高度浄水施設の整備促進など質の高い水道を目指した取組を重点的に行っており、高度浄水施設整備事業は国庫補助対象事業となっている。今回の東村山浄水場高度浄水施設についても、国庫補助を受けて実施していく予定である。
 また、平成16年6月に策定された「水道ビジョン」では、国民の水道に関する最大の関心は、供給される水の安全性・快適性であるとしながらも、水道水源の水質の悪化などにより、すべての国民が安心できる安全な水を供給するには未だ至っていないとしている。
 さらに、水道水源水質の悪化は、かび臭の発生、塩素消毒による消毒副生成物の生成、及び塩素注入量増加による塩素臭の問題など、種々の問題を引き起こす原因であり、原水水質に応じた適切な水質管理をするとともに、高度浄水施設の積極的な整備の促進など、水道水源の汚濁対策に万全を期す必要があるとしている。

3 事業の定性的効果

 オゾンと生物活性炭による高度浄水処理では、これまでの浄水処理では十分に除去できなかった様々な物質を処理することが可能となる。以下では、この高度浄水処理の定性的効果について記述する。

3−1 より高いレベルでの安全性の確保

 水源河川における様々な汚濁物質のなかには、人体への影響が懸念されている物質もある。
 例えば、河川水に存在する有機物を前駆体として、塩素処理により生成されるトリハロメタンは、発ガンの恐れがあることが指摘されており、水質基準においては、水道水中での濃度を0.1mg/L以下に抑えることが義務付けられている。
 通常処理系においては、原水水質の変動状況等により体制を強化し、粉末活性炭処理での的確な対応により、トリハロメタン濃度の水質基準値を満たしてきている。
 一方、金町浄水場高度浄水施設(第一・二期)の汚濁除去効果実績において、トリハロメタン生成能(前駆体)の約60%の除去効果を確認しており、このことは、従来の粉末活性炭処理に比べて、トリハロメタン濃度を一層抑制することができることを示している。
 また、トリハロメタン以外にも、人体への有害性が指摘されている消毒副生成物、農薬などの微量有機物質、あるいは生活利用上の障害となる陰イオン界面活性剤などについても除去・低減化が可能である。
 これらのことから、高度浄水処理の導入により、より高いレベルでの安全性の確保が図られ、また、その他の汚濁物質に対しても、的確な処理が可能となるとともに、今後における基準の強化・拡充などへも、柔軟に対応していくことができる。

表 主な除去効果
除去対象項目 除去率
トリハロメタン生成能 約60%
陰イオン界面活性剤 約80%

3−2 おいしさの向上

 粉末活性炭処理では除去しきれない、いわゆる「カルキ臭」については、当局のこれまでの調査により、原水中のアンモニア態窒素と消毒用の塩素が反応して生じるトリクロラミンが最大の要因であることがわかっている。
 オゾンと生物活性炭による高度浄水処理では、このトリクロラミンの原因となるアンモニア態窒素を、ほぼ100%除去することが可能という結果となっており、これまで利根川水系の通常処理水に残存していた「カルキ臭」も、高度浄水処理の導入により解消することが可能となる。また、高度浄水処理では有機物の除去効果が大きいため、塩素使用量を抑えることができ、残留塩素の低減も図ることができる。
 さらに、かび臭原因物質の2−メチルイソボルネオールの除去についても大きな効果をあげており、異臭味の無い、おいしい水を供給することができる。

表 主な除去効果
除去対象項目 除去率
アンモニア態窒素 約100%
かび臭原因物質 約100%

3−3 お客さまニーズへの対応

 通常処理水との混合ながら、区部のほぼ全域と多摩地区の一部に、高度浄水処理された水が供給できるようになった今日においても、未だ3割を超える方が飲み水としての水道水に不満を持っており、さらに、高度浄水処理の導入を望む回答が9割を超えている。
 こうした結果を受け、水道事業者としては、ニーズに対し一日も早い対応が求められていることを、改めて認識している。
 そうしたなか、本事業を実施することにより「より高いレベルでの安全性の確保」や「おいしさの向上」が図られ、お客さまのニーズに応えられる、安全でおいしい水を供給することができる。

3−4 水道水に対する信頼性の向上による社会全体への貢献

 水道水に対する不満や不安が払しょくされない場合、今後、いわゆる「水道水離れ」が進行し、水道水を飲まなくなる、飲む雰囲気がなくなるだけではなく、うがいや手洗いなども減少し、日常的な健康管理が衰退していくことが懸念される。
 うがいや手洗いの習慣化は、インフルエンザ等のウィルスや細菌による感染症の予防策として絶大な効果を発揮するとされており、学校などの人が集まる場所では、その重要性が大きいと考えられる。
 さらに、「水」は人間の体内で、重要な働きをしており、健康の増進や病気の予防に貢献することが分かっている。特に運動時、また幼児や老人などは、脱水症状になり易く、水分補給が非常に重要であるとされており、今後、高齢社会の進行に伴い、このような認識が一層強まると考えられる。
 また、インフルエンザ治療などには、例年、多額の医療費がかかっているという報告もあり、「水道水離れ」が蔓延すれば、日常的な健康管理が衰退し、国民医療費の増大などにもつながりかねない。 これに対し、高度浄水処理を導入すると、より安全でおいしい水が供給され、水道水に対する不満や不安が解消し、日本が誇るべき「蛇口から直接、水道水を飲む文化」の再認識が見込まれる。うがいや手洗いも不快でなくなり、また、身近に水を飲むことにより、日常の健康管理の向上が図れるとともに、感染症予防の拡大や感染症被害増大の抑制、健康の増進など、社会全体の安全性の高度化に貢献することが期待できる。
 さらに、今後、高度浄水処理が導入されなかった場合に増大が見込まれる「水道水離れ予備軍」に係る費用の抑制も考慮すると、本事業の持つ意義は大きいものと考える。


4 コスト縮減及び代替案立案等の可能性の検討

4−1 コスト縮減方策

(1)効率的な施設整備
 効率的かつ迅速な高度浄水施設の導入を図るため、整備にあたっては、施設を最大限に活用することで施設能力まで給水できるような、設計上の配慮を講じていく。

(2)発生材の有効利用
 コンクリート構造物を専用のミニ・プラント型破砕機により再生砕石に加工し、路盤材等に利用することで、処分費及び材料費の縮減を図る。また、建設発生土の一部を他の工事や盛土や埋戻しに流用することにより、発生土処分費の縮減を図る。

(3)既存施設の一部を土留壁として利用
 既設構造物を撤去し、そこに高度浄水施設を築造することから、既設構造物外壁を土留壁として利用し、土留費用の縮減を図る。

(4)効率的な土留工法の採用
 土留工法について、排出土の少ないECW工法(柱列式連続地中壁)を採用し、排出土運搬処分費の縮減を図る。

4−2 想定される代替案

 高度浄水処理を導入しない場合、高度浄水処理された水と同等の水を得るための代替案としては、以下の方法が挙げられる。

  • 原水水質の改善に向けた取組
  • 河川上流部からの取水・導水
  • 膜ろ過(NF膜)処理の導入
  • 当局による各家庭への浄水器設置

(1)原水水質の改善に向けた取組
 関係する自治体へ、水道水源保全二法(「水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律」、「特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法」)による対応を求め、下水道整備事業、水質保全事業及び水質汚濁防止のための規制等を推進し、原水水質の改善を図ることが有効である。
 しかし、東村山浄水場利根川水系原水の取水地点は、下流域に位置するため、水質保全の対象となる流域が広く、汚染源が複雑であることから、すべての汚染源に的確に対応することは不可能である。
 例えば、利根川及び荒川流域での下水道普及率は、平成17年8月現在で、約65%となっており、過去10年間を見ても、その伸び率は年間、約1〜2%程度に留まっている。また、この流域に係る市町村数は、約180にも上り、全ての市町村において、早急に下水道の普及率を上げていくことは、上記二法による働きかけだけでは、極めて困難であることが分かる。
 さらに、処理方式についてみると、下水処理施設における高度処理の導入実績は依然として少なく、従来の下水処理方式では、水道水源としての良好な水質を得ることは期待できない。
 このようなことから、原水水質の改善は、流域の下流に位置する浄水場としては、理想的な姿ではあるが、相当な期間と莫大な費用を要する。

(2)河川上流部からの取水・導水
 原水水質が清浄な上流部まで取水地点をさかのぼり、そこから専用の管路により導水することにより、水源河川流域の下水道普及状況などに左右されず、現状の通常処理においても、安定した浄水処理を行うことが可能となり、高度浄水処理の導入は必要なくなると考えられる。
 しかし、高度浄水処理を必要としない原水を確保するためには、都市部の下水流入等を考慮し、現在の取水地点より100km程度上流部までさかのぼらなければならず、管路布設に莫大な費用がかかることが推測される。
 このことから、河川上流部からの取水・導水は、代替策として適当ではない。

(3)膜ろ過(NF膜)処理の導入
 汚濁負荷を除去することを目的に膜ろ過処理を導入する。膜の種類として、アンモニア態窒素やトリハロメタンの除去を目的に導入するオゾン処理+生物活性炭処理と同等の能力を確保することが条件となることから、UF膜やMF膜では対応しきれず、より微細なNF膜などの膜ろ過処理が必要であると考えられる。
 しかし、NF膜は、東村山浄水場で取水する原水と同様な水質、同様な規模での導入実績が無く、処理コストや処理性、濃縮排水の処理方法等について、現在、当局においても調査研究を行っているところであり、今後、上記のような汚濁物質に対する、安定かつ継続的な処理性を確認していく必要がある。
 このように、膜ろ過処理は調査研究の段階であり、現時点での導入は時期尚早であり、代替案として適当ではない。

(4)当局による各家庭への浄水器設置
 浄水場へ高度浄水処理を導入する代替策として、当局が各家庭の台所に浄水器を設置(各家庭1か所)し、維持管理する案が考えられる。
 この場合、浄水器の設置及びフィルター交換にかかるコストと高度浄水処理導入コストを比較すると、次表のとおり、高度浄水処理の方がはるかに経済的であることから、浄水器設置を高度浄水処理の代替とすることは適当ではない。

表 浄水器設置と高度浄水処理導入におけるコスト増加分の比較
  1ヶ月・1世帯当たりのコスト追加分 備考
浄水器設置によるコスト増加分 約1,100円
  1. 各家庭に1か所設置した場合
  2. 浄水器設置及びフィルター交換に係る人件費を含む
高度浄水処理によるコスト増加分 約240円
  1. 一般家庭における1ヶ月の平均使用水量を24m³と想定

5 事業の費用対効果分析

5−1 費用と効果[便益]の考え方

費用 高度浄水施設の整備及び維持管理に伴う費用を計上
効果[便益] 高度浄水処理の導入により、下表に示すような効果が見込めるが、ここでは、定量的な分析が可能な「お客さまが独自に行う水質改善行動に伴う費用」及び「粉末活性炭の注入に係る費用」に着目し、これらの行動の軽減分を便益とする。
表 高度浄水処理の導入に伴う効果
見込まれる効果 本評価における定量化
うがいや手洗い、水を飲むことが習慣化されることによる健康の増進、病気の予防  
お客さまが独自に行う水質改善行動に伴う費用の軽減
水道水離れ予備軍に見込まれる費用増大の抑制  
粉末活性炭の注入に係る費用の削減

太文字部分で囲んだ行動の軽減分を効果[便益]として計上した)

(1)水道水用途別の水質改善行動の設定
 インターネット水道モニターアンケートの結果より、お客さまが浄水器の設置やボトルドウォーターの購入など、水質改善行動を取ることが示されており、高度浄水処理の導入により、これら水質改善行動が必要なくなると想定される。
 このことから、水道水の用途を大きく5項目に分け、それぞれについて水質改善行動の設定を行うと、以下の行動が考えられる。

①トイレ 改善行動は行わない
②風呂・シャワー 脱塩素シャワーヘッドの取付け
③洗濯 改善行動は行わない
④調理・飲用 水道水の煮沸消毒(湯冷ましの飲用)・浄水器の設置
ボトルドウォーターの購入
⑤その他(散水等) 改善行動は行わない

 ここで、②の風呂・シャワーの脱塩素シャワーヘッドについては普及率も低く、実態把握が困難であることから、お客さまが独自に行う水質改善行動は、④の調理・飲用に限定する。

(2)水質改善行動の実施割合と単価
 上記から、水質改善行動について次の3点に集約し、この行動に伴い必要となる費用を効果[便益]に置き換えるものとする。

  • 水道水の煮沸消毒(湯冷ましとして飲用)
  • 浄水器の設置(フィルター交換含む)
  • ボトルドウォーターの購入

 また、費用対効果分析に用いる対象人口及び世帯数は、平成16年度配水量実績より、東村山浄水場の給水人口及び世帯数を推定し、このうちの、東村山浄水場の全体処理能力に対する、今回の高度浄水施設導入規模の割合にあたる69%相当とした。

  • 改善行動対象人口  144万人
  • 改善行動対象世帯数 67万世帯
表 水質改善行動に係る効果[便益]の算定
水質改善行動 実施割合※1 数量 単価 効果[便益]
水道水の煮沸消毒 21.6% 14 万世帯 2,400 円/世帯・年 336百万円/年
浄水器の設置フィルター交換  39.5% ※2 26 万世帯 6,550 円/世帯・5年
8,820 円/世帯・年
1,703百万円/5年
2,293百万円/年
ボトルドウォーター購入  12.8% ※3 18 万人 33,000 円/人・年 5,940百万円/年

※1 平成17年度第2回水道モニターアンケート結果より
※2 マンション等入居時より浄水器設置済みの割合を25%と想定し、改善行動より除外した
※3 持ち歩き用途等は改善行動より除外した

(3)粉末活性炭の注入に係る費用の軽減
 高度浄水処理を導入することにより、現在、利根川水系原水において注入されている粉末活性炭は、必要なくなるものと考えられるため、粉末活性炭の注入に係る費用を、効果[便益]に置き換えるものとする。
 東村山浄水場の利根川水系原水における、注入実績等により、年間の平均使用量及び平均費用を試算すると、次表のとおりとなる。

表 粉末活性炭の注入に係る費用
項目名 効果[便益]
粉末活性炭使用量 183 t/年
粉末活性炭の注入に係る費用 53 百万円/年

5−2 分析結果

 高度浄水施設の導入に係る費用と、お客さまが独自に行う水質改善行動に係る便益及び粉末活性炭の注入に係る便益を、それぞれ「水道事業の費用対効果分析マニュアル(案)<改訂版>」((社)日本水道協会)を参考に、評価期間を50年間とした現在価値に換算し、計上した。
 効果[便益](B)と費用(C)を比較すると、費用便益比(B/C)は2.99となる。

表 分析結果
費用(C) 645億円
効果[便益](B) 1,930億円
費用便益比(B/C) 2.99

6 水道事業ガイドラインにおける業務指標から見た改善効果

 水道事業ガイドラインにおける業務指標は、水道サービスの国際規格化を検討した ISO/TC224の基本理念に基づいて作成したものである。
 東村山浄水場の直接配水区域内において、水道事業ガイドラインの業務指標を見た場合、今回の高度浄水処理導入により、次表のとおり業務指標が改善されることが想定される。

表 業務指標の改善効果
業務指標 単位 導入前(H15) 導入後
カビ臭から見たおいしい水達成率 100 100
塩素臭から見たおいしい水達成率 25 100※3
総トリハロメタン濃度水質基準比 33※1 13※1
有機物(TOC)濃度水質基準比 −※2  20※4

※1 導入前の数値については給水栓での値、導入後の数値については浄水場出口の想定値
※2 データ無し
※3 管路整備や貯水槽水道対策等、他の関連業務の効果を含む
※4 金町浄水場高度浄水施設(第一・二期)の水質データから推定

7 対応方針

 本事業は、定性的評価及び費用対効果分析の結果から、現計画による整備は適切であると認められるため、事業を実施する。

※東村山浄水場高度浄水施設は、平成18年度国庫補助金の予算要望にあたって第三者の意見を聴取した。

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