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水道事業紹介

登戸連絡管・町田連絡管 事業評価

目次

  1. 1 事業の概要
    1. 1−1 事業目的
    2. 1−2 事業経緯
    3. 1−3 事業概要
  2. 2 事業を取巻く状況
    1. 2−1 想定される災害等
    2. 2−2 広域連携の推進
    3. 2−3 社会ニーズ(お客さまの意識)
  3. 3 事業の定性的効果
    1. 3−1 想定される断水被害
    2. 3−2 断水被害の影響
    3. 3−3 断水による被害・影響の回避
  4. 4 コスト縮減及び代替案立案等の可能性の検討
    1. 4−1 コスト縮減方策
    2. 4−2 代替案立案の可能性の検討
  5. 5 事業の費用対効果分析
    1. 5−1 算定手法
    2. 5−2 費用対効果
  6. 6 水道事業ガイドラインにおける業務指標から見た改善効果
  7. 7 対応方針

1 事業の概要

1−1 事業目的

 本事業は、震災時や大規模な水源水質事故時等の非常時に、水を相互に融通することにより、給水安定性の向上を図ることを目的として、東京都と川崎市とが共同で、双方の水道管路を接続する連絡管を整備するものである。

1−2 事業経緯

平成15年12月 東京・川崎 登戸連絡管の設置に関する基本協定締結
平成17年 2月 東京都と川崎市における連絡管の設置に関する基本協定締結
(登戸連絡管の事業費及び工期の変更、町田連絡管の追加)
平成17年 5月 東京・川崎 登戸連絡管の設置に関する建設協定締結
平成17年 7月 東京・川崎 町田連絡管の設置に関する建設協定締結

1−3 事業概要

(1)工事計画

ア 工事計画
融通水量:東京都、川崎市とも、日量最大約10万m³
延長:約25m
口径:800mm

イ 事業費
9,000万円(見込み:東京都と川崎市とが半分ずつ負担)

ウ 工期
平成18年度

(2)町田連絡管

ア 工事計画
融通水量:東京都、川崎市とも、日量最大約1.5万m³
延長:約45m
口径:400mm

イ 事業費
7,000万円(見込み:東京都と川崎市とが半分ずつ負担)

ウ 工期
平成18年度

図 登戸連絡管及び町田連絡管の位置図

2 事業を取巻く状況

2−1 想定される災害等

(1)地震災害
 大地震により甚大な被害をもたらした兵庫県南部地震から10年余りが経過し、また、昨年から今年にかけては、新潟県中越地震、福岡県西方沖の地震、宮城県沖の地震など、相次いで大地震が発生している。
 首都圏においても、南関東地域における直下地震の切迫性が指摘され、本年9月には、中央防災会議が「首都直下地震対策大綱」を発表するなど、これまで以上に地震に備えた取組の重要性が認識されている。

(2)水源水質事故
 過去から現在に至るまで、水源水質事故は規模の大小を問わず突発的に発生し、取水停止や粉末活性炭注入等の浄水処理による対応を余儀なくされる場合がある。
 とりわけ、昭和45年に発生したシクロヘキシルアミン(たまねぎ腐敗臭)による水源水質事故では、朝霞浄水場が2日間以上にわたって取水を停止するという被害を受けた。また、昭和51年のフェノールの流出事故では、金町、朝霞及び三園浄水場に影響を与え、金町浄水場では最高で120ppmの活性炭注入を実施している。さらに、シアンによる取水停止も幾度か経験しており、昭和63年には朝霞浄水場で17時間の取水停止を余儀なくされている。
 平成16年度における水源水質事故件数は、都に関連するもので308件にも達しており、そのうち33件は浄水処理に影響を及ぼすなど、今後も水源水質事故の発生に十分に備えておく必要がある。

(3)管路事故
 都では、平成25年度までに、強度が低く破裂や漏水の恐れがある経年管の全てを取り替える予定にしており、経年管の解消率は平成16年度末現在で94%(残存延長:495km)となっている。
 しかし、経年管に次いで漏水の危険性が高い初期ダクタイル管の解消率は、平成16年度末現在で4%(残存延長:2,492km)にとどまっており、未だ管路事故の危険性は解消されたとはいえない。
 また、給水所における二系統受水化、送配水機能の分離、給水区域内の管網整備などが不十分な地域が存在するため、そのような地域でひとたび管路事故が発生すると、断水や濁水が発生する恐れがある。

2−2 広域連携の推進

 首都圏の社会経済活動は、行政区域の枠組みを越えて展開しており、首都圏に位置する各自治体は、環境対策、交通ネットワーク整備、地震・防災対策など、多岐にわたる広域的な行政課題を共有している。これらの課題の解決には、行政区域の枠組みを越えた自治体間の協働による取組が有効であり、なかでも地震・防災対策には、緊急かつ重点的に取り組む必要がある。
 こうした状況を踏まえ、都では、平成14年11月に策定した「重要施策」において、広域的な視点からの取組の一例として「発災時に備える広域的な水の相互融通のしくみづくり」を掲げた。発災時に都民の水を確保するためには、既成概念にとらわれない水供給の手法が重要であり、災害等の非常時に、近隣自治体間で水の相互融通を行う新たなしくみの構築を進めるというものである。
 都では、「重要施策」として、近隣水道事業者と共同で検討を進めるとともに、実現性の高い箇所については、二者間協議を積極的に進めてきた。
 その成果として、埼玉県と共同で整備した「朝霞連絡管」に続き、川崎市と共同で「登戸連絡管」及び「町田連絡管」を整備することとした。
 なお、平成16年6月に厚生労働省が策定した「水道ビジョン」では、「水道システムは浄水場等の基幹施設を中心としたネットワーク構造であり、これらが都市の実情に併せて個々のシステムとして、あるいは複数のシステムが連担して成立している。災害等のリスクに対する水道システムの安全性を確保するためには、リスク分散、重複投資の回避の観点から、相互連携や広域的な対策を行い面的な安全性を確保することが、リスクマネジメント的にも経済的にも有効である。」としており、広域連携の推進は、緊急かつ重要な課題になっている。

2−3 社会ニーズ(お客さまの意識)

 「水源確保や安定給水」をテーマに、平成17年度に都が実施したインターネット水道モニターアンケートでは、今後の安定給水のために都が力を入れるべき施策として、「事故時や震災時にも強い水道施設の整備」を選択(複数回答)した水道モニターの割合が、64.1%となっている。
 また、都が実施した「水道事業に対するお客さま満足度調査(平成15年10月)」では、「事故時・震災時に強い水道施設の整備や漏水防止」を重視すると回答したお客さまが、87.5%となっており、安全な水を安定的に供給するための事業について、重視する傾向が高いという結果が得られている。

3 事業の定性的効果

3−1 想定される断水被害

(1)城南系配水系統(登戸連絡管関連)
 登戸連絡管と接続する長沢線は、相模川を水源とする長沢浄水場(施設能力:日量20万m³)で浄水した水を23区の南部区域(以下「城南系配水系統」という。)に配水している。城南系配水系統の給水人口は約190万人、一日平均配水量は約70万m³であり、城南系配水系統は、長沢浄水場のほか、大蔵給水所(朝霞浄水場系)及び和田堀給水所(三郷・境浄水場系)から配水されている。
 朝霞をはじめとする主要な浄水場や城南系配水系統までの管路などに被害が生じ、供給能力が著しく低下した場合には、城南系配水系統において断水が発生する恐れがある。

(2)聖ヶ丘系配水系統(町田連絡管関連)
 町田連絡管が位置する聖ヶ丘系配水系統は、東村山浄水場から聖ヶ丘給水所を経由して配水されている。聖ヶ丘系配水系統の給水人口は約16万人、一日平均配水量は約5万m³である。
 東村山浄水場や聖ヶ丘系配水系統までの管路などに被害が生じ、供給能力が著しく低下した場合には、聖ヶ丘系配水系統の一部において断水が発生する恐れがある。

3−2 断水被害の影響

(1)生活面への影響
 断水が発生した場合、飲料水や炊事用水はもとより、入浴、洗濯、洗面のほか、トイレの使用にも支障を来すなど、日常生活への支障や衛生環境の悪化を余儀なくされる。

(2)都市活動への影響
 断水が発生した場合、都市活動の面では、工場の生産調整や飲食店における営業時間の短縮、営業停止に加え、水冷式空調設備の停止、冷却設備の停止に伴う情報機器等の機能障害及び大学等の教育施設の休校など、社会経済活動に計り知れない影響を及ぼすことが想定される。

(3)生命及び財産への影響
 以上のような影響に加え、都民の生命や財産の維持に大きく貢献する消防活動や医療活動にも、深刻な影響を及ぼすことが考えられる。
 断水が発生した場合、消火用水の確保が困難となるため、延焼による火災被害の拡大が想定され、生命や財産が失われる可能性がある。
 また、手術や人工透析等の水を多く必要とする医療行為への影響が避けられず、最悪の場合には生命に係る事態も想定される。

3−3 断水による被害・影響の回避

(1)登戸連絡管
 登戸連絡管の整備により、川崎市から日量10万m³のバックアップが可能となるため、城南系配水系統における断水被害を回避もしくは軽減できる。

(2)町田連絡管
 町田連絡管の整備により、川崎市から日量1.5万m³のバックアップが可能となるため、聖ヶ丘系配水系統における断水被害を回避もしくは軽減できる。


4 コスト縮減及び代替案立案等の可能性の検討

4−1 コスト縮減方策

 制水弁室等の附属施設に工場製品を利用することや、埋戻材について、従来の遮断用砂に替えて改良土を利用することを検討する。また、登戸連絡管の整備にあたっては、断水・通水作業の回数が最小限となるように、都側の接続管路における断水を伴う関連工事と施工時期を調整するなど、様々な角度からコスト縮減に努めていく。

4−2 代替案立案の可能性の検討

 連絡管を整備しない場合、連絡管を整備した場合と同等の給水安定性を確保するための代替案としては、以下の方法が挙げられる。

(1)代替施設の整備

ア バックアップのための浄水場の整備
 近年の実績をみると、浄水場整備(管路整備は含まない。)には水量1m³/日当たり約14万円の建設費が必要となるとともに、維持管理費も発生する。
 連絡管の建設費は、登戸連絡管が水量1m³/日当たり約450円、町田連絡管が水量1m³/日当たり約2,300円であり、維持管理費においても少額であるため、費用の面から連絡管整備が有利である。

イ バックアップのための管路の二重化
 登戸連絡管を活用するケースとして、第一城南幹線(上井草和泉線分岐〜大蔵給水所:約3.6km)の事故時が考えられるが、この区間の管路を二重化した場合、建設費は約100億円になる。
 また、町田連絡管を活用するケースとして、多摩中央幹線(聖ヶ丘給水所〜町田市分岐:約6.4km)の事故時が考えられるが、この区間の管路を二重化した場合、建設費は約80億円になる。
 以上のように、費用の面から連絡管整備が有利である。

(2)非常時用の水源としての新たな地下水源の確保
 非常時の給水安定性を高めるためには、新たな地下水源を確保することが考えられる。しかし、近年の実績として、道路整備に伴い移設することとなった井戸の設置費用をみると、施設能力1,200m³/日に対して約5,000万円であることから、費用の面から連絡管整備が有利である。
 また、水質面の問題などから休止している水源井戸の中には、技術的に有害物質を除去することにより再開可能なものもあるが、連絡管付近には連絡管の融通水量に見合う施設能力を持つ休止井戸が存在しないため、連絡管整備の代替とすることはできない。
 なお、地盤沈下防止等の観点から、これまでも地下水の揚水規制が実施されており、新たに地下水源を確保することは難しいと考えられる。

5 事業の費用対効果分析

5−1 算定手法

 費用(C)及び効果[便益](B)は、「水道事業の費用対効果分析マニュアル(案)<改訂版>」((社)日本水道協会)を参考に、評価期間を50年間として、現在価値に換算する。

(1)費用
費用(C)は、建設費及び維持管理費を計上する。

(2)効果[便益]
 断水被害が発生するケースとしては、下表に示すような、浄水場、給水所及び管路の事故が考えられるが、ここでは、定量的な分析が可能な「管路事故」に着目し、地震時及び漏水事故時における断水被害の軽減分を便益とする。

表 想定される水道施設の被害
  地震時 水源水質事故時 その他
浄水場 取水・導水・浄水施設、ポンプ、配水池の損傷 取水停止・処理能力低下 停電、ポンプ等の故障
給水所 ポンプ、配水地の損傷 停電、ポンプ等の故障
管路 破損・継手抜け
腐食・亀裂・外傷等を原因とする漏水事故

太文字部分 で囲んだ行動の軽減分を効果[便益]として計上した)

ア 登戸連絡管
 大蔵給水所への送水管路である第一城南幹線が被害を受けた場合、城南系配水系統は送配水機能が分離されていないことから、迅速なバックアップが困難である。このため、城南系配水系統の一部に断水が発生する恐れがある。
 登戸連絡管の整備により、川崎市からの迅速なバックアップが可能となるため、登戸連絡管の効果[便益](B)は、第一城南幹線の被害に伴う断水被害の軽減分とする。

イ 町田連絡管
 聖ヶ丘給水所下流の多摩中央幹線が被害を受けた場合、聖ヶ丘系配水系統においては隣接する配水系統から全量をバックアップすることが困難である。このため、聖ヶ丘系配水系統の一部に断水が発生する恐れがある。
 町田連絡管の整備により、川崎市からのバックアップが可能となるため、町田連絡管の効果[便益](B)は、多摩中央幹線の被害に伴う断水被害の軽減分とする。

5−2 費用対効果

 費用対効果分析の結果を下表に示す。

表 費用対効果分析結果
  登戸連絡管 町田連絡管
費用(C) 0.5億円 0.4億円
効果[便益](B) 32.6億円 41.3億円
費用便益比(B/C) 61.30 100.63

注:表中の費用(C)及び効果[便益](B)は、端数を含んでいる。

 なお、当局では、拠点給水所の整備、送水管ネットワークの構築、管路の耐震化などの施設整備を推進している。これにより、公平で効率的な水運用が可能となるだけでなく、非常時のバックアップ機能もあわせて強化される。これらの施設整備は、長い期間を要するとともに、財政面や施工面などの制約を抱えており、この連絡管整備により、早期にバックアップ機能の向上を図ることができる。

6 水道事業ガイドラインにおける業務指標からみた改善効果

 水道事業ガイドラインにおける業務指標は、水道サービスの国際規格化を検討した ISO/TC224の基本理念に基づいて作成したものである。
 下表の通り、連絡管の整備によって「浄水予備力確保率」が改善される。

表 業務指標の改善効果
業務指標 東京都 他都市(平成15年度末)
平成16年度末 連絡管整備後 横浜市 名古屋市
浄水予備力確保率 25.5 26.7 ※ 36.3 27.0

※:災害等の非常時において、川崎市側の施設の供給能力が不足している場合には、都は受水できないため、不確定な浄水予備力となることから、※を付けている。

(参考)
・浄水予備力確保率(安定)
 浄水予備力確保率は、水運用の安定性、柔軟性及び危機対応性を示すものである。浄水施設能力は、原水水質の汚染事故時や施設の事故時にも対応可能となる予備力を確保していることが望ましい。

浄水予備力確保率={(全浄水施設能力−一日最大浄水量)/全浄水施設能力}×100

7 対応方針

 本事業は、定性的評価及び費用対効果分析の結果から、現計画による整備は適切であると認められるため、事業を実施する。

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