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水道事業紹介

三郷浄水場高度浄水施設(第二期)事業評価

目次

  1. 1 事業の概要
    1. 1−1 事業目的
    2. 1−2 事業経緯
    3. 1−3 事業概要
  2. 2 事業を取巻く状況
    1. 2−1 三郷浄水場の浄水処理の現状
    2. 2−2 社会的ニーズ(お客さまの意識)
    3. 2−3 水質基準等の強化・拡充と浄水処理への対応
    4. 2−4 国における高度浄水施設整備促進の取組
  3. 3 事業の定性的効果
    1. 3−1 より高いレベルでの安全性の確保
    2. 3−2 おいしさの向上
    3. 3−3 お客さまニーズへの対応
    4. 3−4 水道水に対する信頼性の向上による社会全体への貢献
  4. 4 コスト縮減、代替案立案等の可能性の検討
    1. 4−1 コスト縮減方策
    2. 4−2 想定される代替案
  5. 5 事業の費用対効果分析
    1. 5−1 費用と効果[便益]の考え方
    2. 5−2 分析結果
  6. 6 対応方針

第1 事業の概要

1 事業目的

 利根川水系を水源とする浄水場では、流域河川における原水水質の課題を抱えており、かび臭原因物質や陰イオン界面活性剤、消毒副生成物等、様々な水質問題への対応を迫られてきている。
 本事業は、お客さまに、より安全でおいしい水を供給することを目的に、三郷浄水場における取水量の全量について高度浄水処理できるよう、これまでの整備に引き続き、高度浄水施設(第二期)の整備を行うものである。

2 事業経緯

 三郷浄水場では、夏場のかび臭の発生や冬場に高濃度となるアンモニア態窒素の発生など、水源水質の悪化に対応するため、高度浄水処理を導入することとした。
 当局では、従来から中期経営計画を定期的に策定することで目標管理を徹底させ、成果重視の経営を行うとともに、これらの情報を積極的に公表するなど、民間的な経営手法を積極的に活用してきており、効率的で透明性の高い経営を進めている。
 高度浄水処理の導入については、現在の中期経営計画である東京水道経営プラン2004において、おおむね10年以内に達成すべき施設整備長期目標の一つに設定するとともに、主要事業に位置付け、長期的な視点から計画的に施設を整備することとしている。
 三郷浄水場の高度浄水処理の導入に当たっては、浄水場を稼動させながらの施設整備となること及び導入効果を早期に発現させる必要があることなどを踏まえ、二期に分け、段階的な整備として進めてきた。

三郷浄水場における高度浄水処理導入の経緯

平成 6年 3月
東京都水道事業変更認可(高度浄水施設整備)
(厚生大臣(当時)認可)
平成11年 4月
三郷浄水場高度浄水施設(第一期)完成
平成20年度
三郷浄水場高度浄水施設(第二期)着手予定

3 事業概要

(1)工事計画

ア 導入規模
第二期整備  日量最大55万立方メートル

イ 処理フロー
これまでの三郷浄水場での処理実績や運転管理の一体性などを考慮し、既存の高度浄水施設(第一期)と同様、オゾンと生物活性炭とによる処理とする。
原水取水→凝集沈でん→オゾン処理
生物活性炭処理
→砂ろ過→送・配水
(注)太文字部分
が、高度浄水処理導入により追加となる部分

ウ 建設位置
三郷浄水場(埼玉県三郷市彦江三丁目12番地2)内に建設する。

(2)事業費
 178億円(見込み)

(3)工期
 平成20年度 工事着手予定、平成24年度 完成予定、
 平成25年度 運用開始予定

第2 事業を取巻く状況

1 三郷浄水場の浄水処理の現状

(1)三郷浄水場の原水水質汚濁の現状
 三郷浄水場で取水している江戸川の原水水質を見ると、流域の下水道整備や中川・江戸川連絡導水路放流位置変更等の原水水質改善に係る整備により、近年、アンモニア態窒素濃度については下降傾向が見られるものの、水質が良好な多摩川上流部と比べると依然高く、良好な状態まで改善されていない。また、かび臭原因物質の2−メチルイソボルネオールやトリハロメタン生成能については、未だ横ばい傾向が続いている。
 また、日々変動する原水水質の汚濁状況に対し、これまでの通常処理では、汚濁の状況に応じて注入する塩素量の制御などの運転管理が難しくなっている。
 今後においても、下水道普及率は年々増加すると予想されるものの、現在の下水処理方式(一般的には二次処理)では、トリハロメタンのもととなる物質の残存や、かび臭原因物質を排出する藻類を増殖させる原因となる窒素、リンなどの汚濁物質を完全に除去することが困難なことなど、多くの課題が残されており、原水水質の急速な改善は期待できない。

図 原水水質比較

グラフ:アンモニア態窒素(年間最大値) グラフ:2−メチルイソボルネオール(年間最大値) グラフ:トリハロメタン生成能(年間最大値)※トリハロメタン生成能については、平成15年度までのデータである。また、採水場所は浄水場の各取水地点となっている

注:トリハロメタン生成能については、水質検査計画見直しの際に、総トリハロメタンの測定へ移行したため、平成16年度以降、測定対象項目から除外している。

(2)粉末活性炭処理の限界
 三郷浄水場の高度浄水施設は、第一期が既に稼働しているが、現在、全体施設能力の約2分の1の割合であり、高度浄水処理した水は、通常系の処理水と配水池で混合し、給水している。
 通常系の処理においては、かび臭原因物質など汚濁物質への対応として、粉末活性炭処理を行っているが、この粉末活性炭処理には一定の除去効果があるものの、当局が導入している高度浄水処理に比べると、その除去効果が低いといわざるを得ない。
 また、アンモニア態窒素については、粉末活性炭処理では除去することができないため、高度浄水処理された水と混合した給水でもカルキ臭が残存してしまう。
 一方、施設の運転面においては、降雨時や渇水時など河川の水質変動が著しいときは、その変動に的確に追随することに苦慮するケースもあり、厳しい対応を余儀なくされている。さらに、粉末活性炭の長期間にわたる注入や高い注入率での処理を行うと、ろ過水への粉末活性炭の漏えいが懸念されるため、ろ過速度を低下させたり洗浄の頻度を上げたりする必要があり、処理能力の低下につながるなどの影響がある。
 また、粉末活性炭の注入量の増加に比例して、浄水処理過程での汚泥量が増えるため、発生土処分費や環境負荷の増大にもつながる。

2 社会的ニーズ(お客さまの意識)

 今年5月に行った「平成18年度 水道事業に対するお客さま満足度調査」(無作為抽出、対象 一般家庭3,000件、事業所2,000件(うち回答数3,301件)。以下「満足度調査」という。)によると、「飲み水としての水質の満足度」では、36パーセントの方が満足という意向を示しているのに対し、42.6パーセントの方が不満を感じているとの結果を得た。
 また、インターネット水道モニター(公募制、モニター数500名)を対象に、今年7月に行った「平成18年度第1回水道モニターアンケート」(回答数453名。以下「モニターアンケート」という。)においては、「飲み水としての水道水の満足度」では、59.6パーセントの方が満足という意向を示しているのに対し、34.7パーセントの方が不満を感じているとの結果が得られている。
 平成16年11月に都の浄水場としては3箇所目となる朝霞浄水場の高度浄水施設が稼働したことにより、通常処理水との混合ではあるが、高度浄水処理した水を区部のほぼ全域と多摩地区の一部とに供給できるようになった今日においても、対象者の選定方法に違いはあるものの、二つの調査結果からともに3割以上の方が、依然として水道水に対して不満を感じていることが分かる。
 さらに、モニターアンケートの結果から、三郷浄水場の給水区域に在住するモニターに限った場合でも、35.8パーセントの方が、「飲み水としての水道水」に対して不満を感じていることが分かった。
 なお、不満を感じる理由として、「おいしさ」に対する不満回答が、満足度調査では44.7パーセント、モニターアンケートでは61.8パーセントとなっている。
 また、「安全性」に対する不満回答が、満足度調査では18パーセント、モニターアンケートでは42.7パーセントとなっている。
 「おいしさ」については、二つの調査結果ともに不満を感じている方が多いが、「安全性」については、回答に差が現れている。
 これは、水道事業に興味を持ち、水質問題など様々な情報を得ているインターネット水道モニターの水道水の安全性に対する意識がより高いことによる結果であると推察できる。
 一方、満足度調査において、安全性について不安を感じていると回答した方は、18パーセントであったが、高度浄水処理の導入など、「安全でおいしい水の供給に向けた取組について」という質問に対しては、84.8パーセントという多くの方から「期待する」という回答を得ており、安全性について不安を感じるという数値は低いものの、より安全でおいしい水への期待が高いことが分かる。
 なお、モニターアンケートにおける「高度浄水処理の導入について」という質問では、水系による原水水質の違いや高度浄水処理に係るコストを示した上で調査を実施しており、96.5パーセントの方から導入を望む回答を得ていることから、二つの調査結果ともにより安全でおいしい水の供給に向けた取組に対して、お客さまは高い期待を持っていることが分かる。

平成18年度 水道事業に対するお客さま満足度調査結果(速報値)
n=3,301

  • 東京都の水道水に対する満足度

    飲み水としての水質

    「非常に満足」 1.3%  
    「満足」 11.3%  
    「やや満足」 23.4% 合計36.0%
    「やや不満」 16.4%  
    「不満」 12.1%  
    「非常に不満」 5.3%  
    「その用途で利用していない」 8.8% 合計42.6%

    安全性

    「非常に満足」 4.3%  
    「満足」 21.5%  
    「やや満足」 24.5% 合計50.3%
    「やや不満」 8.7%  
    「不満」 5.2%  
    「非常に不満」 4.1% 合計18.0%

    味(おいしさ)

    「非常に満足」 0.9%  
    「満足」 7.7%  
    「やや満足」 16.8% 合計25.4%
    「やや不満」 17.8%  
    「不満」 16.4%  
    「非常に不満」 10.5% 合計44.7%

  • 高度浄水処理の導入促進など、安全でおいしい水の供給に向けた取組

    「非常に期待する」 25.6%  
    「期待する」 44.0%  
    「やや期待する」 15.2% 合計84.8%
    「あまり期待しない」 1.5%  
    「期待しない」 0.4%  
    「全く期待しない」 0.3% 合計2.2%

平成18年度第1回水道モニターアンケート結果(水質管理おいしい水)
(局ホームページから)
n=453

  • 飲み水としての満足度

    「満足している」 19.2%  
    「どちらかといえば満足している」 40.4% 合計59.6%
    「どちらかといえば不満である」 27.4%  
    「不満である」 7.3% 合計34.7%

    その不満理由としては(複数回答)

    「水道水の安全性に不安があるから」 42.7%
    「水道水がおいしくないから」 61.8%
    「カルキ臭いから」 28.7%
    「かび臭いから」 7.0%
    「水温が高く、生ぬるいから」 26.1%
    「濁りや色が付いているから」 1.9%
    「受水タンクの管理に不安があるから」 31.2%

    三郷浄水場の給水区域に限った場合

    「満足している」 24.7%  
    「どちらかといえば満足している」 30.9% 合計55.6%
    「どちらかといえば不満である」 28.4%  
    「不満である」 7.4% 合計35.8%
  • 今後の高度浄水処理の導入について

    「料金が少々上がっても積極的に導入を進めるべき」 20.1%
    「料金が上がらない工夫をしながら、順次、導入を進めるべき」 76.4%
      合計96.5%
    「国の水質基準を満たしているのであれば、導入の必要はない」 1.5%
  • 水道水に期待するもの(複数回答)

    「安全性」 97.1%
    「おいしさ」 69.8%
    「渇水・事故等にかかわらず常に安定した給水を確保」 77.7%

3 水質基準等の強化・拡充と浄水処理への対応

 水道法に基づく水質基準は、昭和33年に制定されて以来、適宜改正が行われてきた。
 特に、平成4年の改正においては、基準項目が大きく拡充されるとともに、浄水水質の管理目標として水質基準を補完する項目が設定されるなど、全面的な見直しが行われた。
 その後、新たに消毒副生成物の問題やクリプトスポリジウムなど耐塩素性の微生物による感染症の問題が提起され、また、報道などにおいても、水道事業における様々な水質問題が取り上げられるなど、更なる水道水質管理の充実・強化が求められており、WHO飲料水水質ガイドライン改訂までの経緯を踏まえ、水質基準等の抜本的な見直しが審議された。
 こうして、現在の水質基準は、従来からその危険性を問題視され、基準に位置付けられているトリハロメタン等に加え、新たに大腸菌、臭素酸、ジクロロ酢酸、アルミニウムなど13項目を基準項目に取り入れるなど大幅に改正され、平成16年度から施行されている。
 さらに、現在、厚生科学審議会生活環境水道部会においては、「水質基準については、最新の科学的知見に従い常に見直しが行われるべき」としていることから、水道水質管理の一層の充実・強化を図るため、水質基準等の見直しを行うとしている。
 このように、水道水質のレベルアップを目指した基準の見直しは、今後も適宜行われると見られ、事業者としても基準強化等に対し、適切に対応することが求められている。

4 国における高度浄水施設整備促進の取組

 厚生労働省は、安全でおいしい水を確保するために、水道原水の水質保全、水道の水質管理の充実、高度浄水施設の整備促進など質の高い水道を目指した取組を重点的に行っている。
 また、平成16年6月に策定された水道ビジョンでは、国民の水道に関する最大の関心は、供給される水の安全性・快適性であるとしながらも、水道水源の水質の悪化などにより、すべての国民が安心できる安全な水を供給するには未だ至っていないとしている。
 さらに、水道水源水質の悪化は、かび臭の発生、塩素消毒による消毒副生成物の生成、塩素注入量増加による塩素臭など、種々の問題を引き起こす原因であり、原水水質に応じた適切な水質管理をするとともに、高度浄水施設の積極的な整備の促進など、水道水源の汚濁対策に万全を期す必要があるとしている。

第3 事業の定性的効果

 オゾンと生物活性炭とによる高度浄水処理では、これまでの浄水処理では十分に除去できなかった様々な物質を処理することが可能となる。ここでは、この高度浄水処理の定性的効果について記述する。

1 より高いレベルでの安全性の確保

 原水中における様々な物質や浄水処理過程で生成される物質の中には、人体への影響が懸念されているものもある。
 例えば、原水中に存在する有機物を前駆体として塩素処理により生成されるトリハロメタンは、発がんのおそれがあることを指摘されており、水質基準においては、水道水中での濃度を1リットル当たり0.1ミリグラム以下に抑えることが義務付けられている。
 また、トリハロメタンなどの水道水中の揮発性消毒副生成物は、飲用による経口曝露のほかにも、入浴時において経気道的及び経皮的に曝露することが考えられている。
 国立医薬品食品衛生研究所における検討では、水道水を数リットル飲用した場合に相当するトリハロメタンの曝露量を、浴室で経気道的及び経皮的に曝露していることが明らかになったと報告されている。(注)
 こうした中、通常処理においても、原水水質の変動時等には、管理体制を強化し、粉末活性炭処理での的確な対応を図ることにより、トリハロメタン濃度の水質基準を満たし、安全性を確保しているところであるが、高度浄水処理においては、金町浄水場での汚濁除去効果実績から、トリハロメタン生成能(前駆体)の約60パーセントを除去できることを確認しており、通常処理に比べトリハロメタン濃度を一層抑制できることが分かっている。
 また、トリハロメタン以外にも、農薬などの微量有機物質や原水水質事故時などの急激な水質の悪化などに際しても、より広範な物質に対応することが可能となる。
 こうしたことを踏まえると、高度浄水処理の導入により、より高いレベルでの安全性が確保され、的確な浄水処理が可能となるとともに、今後における基準の強化、拡充などに対しても柔軟に対応していくことができる。


表 主な除去効果
除去対象項目 除去率
トリハロメタン生成能 約60%

注 参考文献
「WHO飲料水水質ガイドライン第三版」(平成16年9月)
厚生労働科学研究「最新の科学的知見に基づく水質基準の見直し等に関する研究」(平成17年度)

2 おいしさの向上

 お客さまの水道水に対する不満要因である「カルキ臭」は、当局のこれまでの調査により、原水中のアンモニア態窒素と消毒用の塩素とが反応して生じるトリクロラミンが最大の要因であることが分かっている。このトリクロラミンの原因となるアンモニア態窒素は、通常系における粉末活性炭処理では除去しきれないが、オゾンと生物活性炭による高度浄水処理では、ほぼ100パーセント除去することが可能である。
 これまでは、高度浄水処理水と通常処理水とを混合して供給していたが、今回の高度浄水施設(第二期)整備により、取水する全量を高度浄水処理することとなり、残存していたカルキ臭を解消することが可能となる。
 加えて、高度浄水処理では有機物の除去効果が大きいため、塩素使用量を抑えることができ、給水栓における残留塩素濃度の低減化にも寄与する。
 また、かび臭原因物質の2−メチルイソボルネオールの除去についても大きな効果を上げており、異臭味の無いおいしい水を供給することができる。


表 主な除去効果
除去対象項目 除去率
アンモニア態窒素 約100%
かび臭原因物質 約100%

3 水道水に対する信頼性の向上による社会全体への貢献

 水道水に対する不満や不安が払しょくされない場合、今後、いわゆる「水道水離れ」が進行し、水道水を飲まなくなる又は飲む雰囲気がなくなるだけではなく、うがいや手洗いなども減少し、日常的な健康管理が衰退していくことが懸念される。
 うがいや手洗いの習慣化は、風邪、インフルエンザ、食中毒などの予防策として大きな効果を発揮するとされており、学校などの人が集まる場所では、その重要性が大きいと考えられる。
 さらに、水は人間の体内で重要な働きをしており、健康の増進や病気の予防に貢献することが分かっている。特に運動時、また、幼児や老人などは、脱水症状になりやすく、水分補給が非常に重要であるとされており、今後、高齢社会の進行に伴い、このような認識が一層強まると考えられる。
 また、インフルエンザ治療などには、例年、多額の医療費が掛かっているという報告があり、国民医療費の増大などにもつながりかねない。
 こうしたことから、高度浄水処理を導入し、より安全でおいしい水を供給することで、水道水に対する不満や不安が解消され、日本が誇るべき蛇口から直接水道水を飲む文化が再認識されることが見込まれる。うがいや手洗いも不快でなくなり、また、水道を身近に感じて水を飲むことによる日常の健康管理の向上など、社会全体の安全性の高度化に貢献することが期待できる。
 また、今後、高度浄水処理が導入されなかった場合に水道水離れがより進行するおそれがあることを考慮すると、本事業の持つ意義は大きいものと考える。

第4 コスト縮減、代替案立案等の可能性の検討

1 コスト縮減方策

 当局では、アウトソーシングの推進又は工事コストの縮減などの効率化を進めるとともに、資産の有効活用を積極的に行い、料金外収入の確保にも努めている。
 今回の高度浄水施設(第二期)の整備に当たっては、設計や施工時において、効率性や環境への影響など、様々な観点から、実施可能なコスト縮減方策を検討していくこととしている。
 ここでは、その方策について、いくつか記述する。

(1)効率的な施設整備
 迅速かつ効率的な高度浄水処理の導入を図るため、既存施設を最大限活用するなど、設計上の配慮を講じていく。

(2)VE制度(※)の活用
 設計時VE、契約後VE等の制度を活用することにより、民間の新技術や創意工夫を積極的に取り入れ、施設整備に係るコストのより一層の縮減を図る。

(3)発生材の有効利用

ア コンクリート構造物から発生するコンクリート塊を専用のミニ・プラント型破砕機により砕石に加工し、路盤材等に利用することで、処分費及び材料費の縮減を図る。

イ 建設発生土の一部を他工事の盛土や埋戻土に流用することにより、発生土処分費の縮減を図る。

(4)効率的な土留工法の採用
 排出土抑制型の土留工法を採用することにより、排出土運搬及び処分費の縮減を図る。

※ VE(Value Engineering)とは、1つの目的を達成するために手段は数多くあるという前提に立ち、機能を低下させずコストを低減できる手段又はコストを上げず機能を向上できる手段がほかにあれば、その手段を積極的に採用していくことにより、コスト縮減と機能・品質の向上とに寄与することを目的とするもの。

2 想定される代替案

 高度浄水処理を導入しない場合、高度浄水処理された水と同等の水を得るための代替案としては、次の方法が挙げられる。

  • 原水水質の改善に向けた取組
  • 河川上流部からの取水及び導水
  • 膜ろ過(NF膜)処理の導入
  • 当局による各家庭への浄水器設置

(1)原水水質の改善に向けた取組
 関係する自治体へ、水道水源保全二法(水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律及び特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法)による対応を求め、下水道整備事業、水質保全事業、水質汚濁防止のための規制等を推進し、原水水質の改善を図ることが有効である。
 しかし、三郷浄水場は、流域最下流に位置するため、水質保全の対象となる流域が広く、汚染源が複雑であることから、すべての汚染源に的確に対応することは不可能である。
 例えば、利根川及び江戸川流域での下水道普及率は、平成17年度末現在で約58パーセントとなっており、過去10年間を見ても、その伸び率は年間約1、2パーセント程度にとどまっている。また、この流域に係る市町村数は、約100にも上り、すべての市町村において、早急に下水道の普及率を上げていくことは、上記二法による働き掛けだけでは、極めて困難である。
 さらに、処理方式についてみると、下水処理施設における高度処理の導入実績は依然として少なく、従来の下水処理方式では、必ずしも水道水の原水として十分良好な水質とはならないと考えられる。
 このようなことから、原水水質の改善は、流域の下流に位置する浄水場としては、理想的な姿ではあるが、相当な期間と莫大な費用を要し、代替案として適当ではない。

(2)河川上流部からの取水及び導水
 原水水質が清浄な上流部まで取水地点をさかのぼり、そこから専用の管路により導水することにより、水源河川流域の下水道普及状況などに左右されず、現状の通常処理においても、安定した浄水処理を行うことが可能となり、高度浄水処理の導入は必要なくなると考えられる。
  しかし、三郷浄水場の場合には、利根川河口堰、霞ヶ浦開発及び霞ヶ浦導水を水源としており、上流部からの取水は当面の対応としては困難である。
 また、高度浄水処理を必要としない原水を確保するためには、都市部の下水流入等を考慮すると、現在の取水地点から100キロメートル程度上流部までさかのぼらなければならず、管路布設に莫大な費用が掛かることが推測される。
 以上のことから、河川上流部からの取水及び導水は、代替案として適当ではない。

(3)膜ろ過(NF膜)処理の導入
 汚濁負荷を除去することを目的に膜ろ過処理を導入することにより、高度浄水処理と同等の水を得ることが考えられる。膜の種類としては、アンモニア態窒素やトリハロメタンの除去を目的として導入するオゾン処理及び生物活性炭処理と同等の能力を確保することが条件となることから、NF膜の中でもより孔径の小さなものによる膜ろ過処理が必要である。
 しかし、こうした孔径の小さなNF膜は、三郷浄水場で取水する原水と同様の水質又は同様の規模での導入実績が無く、処理コスト、処理性、濃縮排水の処理方法等について、現在、当局においても調査研究を行っているところであり、今後、上記のような汚濁物質に対する安定的かつ継続的な処理性を確認していく必要がある。
 このように、膜ろ過処理は調査研究の段階であり、現時点での導入は時期尚早であることから、代替案として適当ではない。

(4)当局による各家庭への浄水器設置
 当局が各家庭の台所に浄水器(各家庭1箇所)を設置し、維持管理する案が考えられる。
 この場合、浄水器の設置及びフィルター交換に掛かるコストと高度浄水処理導入コストとを比較すると、次表のとおり、高度浄水処理の方がはるかに経済的であることから、浄水器設置を高度浄水処理の代替とすることは適当ではない。

表 浄水器設置と高度浄水処理導入におけるコスト増加分の比較
1箇月・1世帯
当たりのコスト増加分
備考
浄水器設置によるコスト増加分 約1,080円
  1. 各家庭に1箇所設置した場合
  2. 浄水器設置及びフィルター交換に係る維持管理費を含む。
高度浄水処理によるコスト増加分 約240円
  1. 一般家庭における1箇月の平均使用水量を24立方メートルと想定した。

第5 事業の費用対効果分析

1 費用と効果(便益)の考え方

(1)定義

ア 費用
 高度浄水施設(第二期)の整備及び維持管理に伴う費用をいう。

イ 効果(便益)
 高度浄水処理の導入により、次表に示すような効果が見込めるが、ここでは、定量的な分析が可能な「お客さまが独自に行う水質改善行動に伴う費用」及び「粉末活性炭の注入に係る費用」に着目し、これらの費用の軽減分をいう。

表 高度浄水処理の導入に伴う効果
見込まれる効果 本評価における定量化
うがい、手洗い及び水を飲むことの習慣化に伴い、健康の増進等が図られることによる医療費等の軽減  
お客さまが独自に行う水質改善に伴う費用の軽減
水道水離れが進行した場合に見込まれる費用増大の抑制  
粉末活性炭の注入に係る費用の軽減

太文字部分 で囲んだ行動の軽減分を効果[便益]として計上した)

(2)水道水用途別の水質改善行動の設定
 モニターアンケートの結果では、お客さまが浄水器の設置やボトルドウォーターの購入など、水質改善行動を執ることが示されており、高度浄水処理の導入により、これらの水質改善行動が必要なくなると想定される。
 このことから、水道水の用途を大きく5項目に分け、それぞれについて、次の水質改善行動を設定することができる。

ア トイレ 改善行動は執らない。
イ 風呂・シャワー 改善行動は執らない。
ウ 洗濯 改善行動は執らない。
エ 調理・飲用 水道水を煮沸消毒する(湯冷ましの飲用)。
浄水器を設置する。
ボトルドウォーターを購入する。
オ その他(散水等) 改善行動は執らない。

 このことから、お客さまが独自に行う水質改善行動は、エの調理・飲用に限定する。

(3)水質改善行動にかかる効果(便益)
 (2)に述べたことから、水質改善行動について次の3点に集約し、これらの行動に伴い必要となる費用を効果(便益)に置き換えるものとする。

ア 水道水の煮沸消毒(湯冷ましとして飲用)
イ 浄水器の設置(フィルターの交換を含む。)
ウ ボトルドウォーターの購入

 費用対効果分析に用いる人口及び世帯数は、まず、平成17年度配水量実績により、三郷浄水場の給水人口及び世帯数を推定する。ここから、高度浄水施設(第二期)から供給する配水量に見合った人口及び世帯数を算出し、次のとおりとする。

対象人口
79万人
対象世帯数
37万世帯

 これらの前提条件により算出した水質改善行動に係る効果(便益)は、次の表のとおりである。

表 水質改善行動に係る効果[便益]
水質改善行動 実施割合
(※1)
数量 単価 効果[便益]
水道水の煮沸消毒 18.4 6.8万世帯 2,400円/世帯・年 163百万円/年
浄水器の設置
フィルター交換
42.6
(※2)
15.7万世帯 7,100円/世帯・5年
8,400円/世帯・年
1,115百万円/5年
1,318百万円/年
ボトルドウォーター購入 11.6
(※3)
9.1万人 31,800円/人・年 2,894百万円/年

注1 モニターアンケート結果による。

注2 マンション等入居時から浄水器が設置済み(ビルトイン)の場合、高度浄水処理導入後も改善行動を継続すると推測し、実施割合から除外した。

注3 持ち歩き用途等は改善行動実施割合から除外した。

注4 貯水槽水道利用者で「貯水槽水道の管理に不安」と回答した方のうち半分程度の方は、高度浄水処理導入後もそれぞれの水質改善行動を継続すると推測し、実施割合から除外した。

(4)粉末活性炭の注入に係る費用の軽減
 高度浄水処理を導入することにより、現在、通常処理系において注入している粉末活性炭は、ほぼ必要なくなるものと考えられるため、粉末活性炭の注入に係る費用を効果(便益)に置き換えるものとする。
 三郷浄水場における注入実績等により、過去5年間の平均使用量及び平均費用を試算すると、次表のとおりとなる。


表 粉末活性炭の注入に係る効果[便益]
項目名 効果[便益]
粉末活性炭使用量 145 t/年
粉末活性炭の注入に係る費用 35 百万円/年

2 分析結果

 高度浄水処理の導入に係る費用とお客さまが独自に行う水質改善行動に係る効果(便益)及び粉末活性炭の注入に係る効果(便益)とを、それぞれ「水道事業の費用対効果分析マニュアル(案)<改訂版>」((社)日本水道協会)を参考に、評価期間を50年間とした現在価値に換算し、計上した。
 なお、評価期間内における維持管理費、購入する物品等については、期間中における金利や将来の物価上昇を考慮した割引率を踏まえつつ、現時点での製造や維持管理形態が継続することを前提に算出した。
 この結果、効果(便益)(B)と費用(C)とを比較すると、費用便益比(B/C)は、3.01となる。

表 分析結果
費用(C) 332億円
効果[便益](B) 998億円
費用便益比(B/C) 3.01

第6 対応方針

 本事業は、定性的評価及び費用対効果分析の結果から、現計画による整備は適切であると認められるため、三郷浄水場高度浄水施設(第二期)整備事業を実施する。

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