初期ダクタイル管の取替 事業評価
− 目次 −
2 事業の適時性(今、実施する必要性)
(1)劣化状況調査
(2)社会的ニーズ
(3)国の示す将来ビジョン
1 事業の目的
当局では、首都東京にふさわしい質の高い水道サービスを実現するため、平常時はもとより、事故時や震災時にも強い一層信頼性の高い水道施設の整備を主要施策の一つに掲げ、事業を推進している。
このうち、管路整備については、強度が低く破損による漏水のおそれや濁り水の原因となる経年管の早期全廃に向け、K0プロジェクトを展開している。
一方、導入初期のダクタイル鋳鉄管(以下「初期ダクタイル管※」という。)についても、管外面が被覆されていないことや管路の曲部・分岐部などにおいて使用される管(以下「異形管」という。)の内面が特別な防錆処理が施されていない(以下「無ライニング」という。)ことなどから、経年管と同様、内外面の腐食により、近年、漏水や濁り水が発生している。
このため、都内に布設されている約25,000kmの配水管のうち、経年管に次いで取替の優先性が高い初期ダクタイル管について、
漏水の防止
耐震水準の向上
濁り水の防止
を目的として、計画的な取替を実施し、安全でおいしい水の安定的な供給を確保する。
※初期ダクタイル管の特徴
異形管部の大半が高級鋳鉄製のため、耐震性が低い。
異形管内面が無ライニングのため、錆の発生が著しく赤水の要因となっている。
ポリエチレンスリーブが未被覆であり、外面腐食、ボルト腐食が進行している。
継手は呑込みが浅く離脱防止機構を備えていないA形継手であり、地震時等の抜け出しが懸念される。
2 事業の適時性(今、実施する必要性)
(1)劣化状況調査
近年、初期ダクタイル管において腐食などに起因する大規模な漏水事故が発生していることから、局内に「経年化調査対象管の劣化に関する技術分析検討委員会」を設置し、平成13年度から平成15年度に区部で劣化状況調査(調査箇所数・配水本管:284箇所、配水小管:2,199箇所)を行った。この結果、初期ダクタイル管は以下のとおり課題を抱えている。
外面腐食によって管厚が薄くなり、既に腐食孔が確認されたものがある。また、土壌との関連を調査した結果、腐食性が強い土壌に埋設された管路では、布設から概ね50年後の平成30年度を超えると漏水が多発するレベルまで腐食が進行することが予測される。




区部全域で継手の連結ボルト腐食が進行しており、欠損や痩せ細り状態のものが約7割に達している。また、初期ダクタイル管の継手構造は、呑込みが浅く離脱防止機構を備えていないA形継手であることから、地震時等における継手の抜け出しによる漏水発生の危険性が高い。
異形管の内面は無ライニングのため、ほぼ全ての箇所で錆が発生しており、調査対象管全体の約8割で錆の付着厚が20mmを超え、水質劣化や通水能力の低下をきたしているとともに、流向の変化による濁り水発生の原因となっている。
異形管部の大半は、経年管と同様に高級鋳鉄製のため、管体強度が低く耐震性が劣っている。
(2)社会的ニーズ
平成15年度に実施した「水道事業に対するお客さま満足度調査」によると、「事故時・震災時に強い水道施設の整備や漏水防止」について、お客さまの期待度と重視度は以下のとおりである。
「非常に期待する」「期待する」「やや期待する」の合計は81.5%であり、事故時・震災時に強い水道施設の整備や漏水防止について、お客さまの期待度は高い。
「非常に重視する」「重視する」「やや重視する」の合計は87.5%であり、事故時・震災時に強い水道施設の整備や漏水防止について、お客さまの重視度は高い。
(3)国の示す将来ビジョン
厚生労働省では、今後の水道に関する重点的な政策課題とその課題に対処するための具体的な施策及びその方策、工程等を包括的に定めた「水道ビジョン」を平成16年6月に策定した。
この中で、管路整備に関して、以下のとおり提言している。(抜粋)
今世紀半ばの我が国の水道のあるべき姿としての長期的な政策目標
地震等の自然災害、停電、水質事故等の非常時でも、施設への被害を最小限に抑えるための施設整備を推進する。
政策目標達成のための総合的な水道施策の推進(災害対策等の充実)
水道システムは浄水場等の基幹施設を中心としたネットワーク構造であり、災害対策としては、システム全体で安全性を確保する方向での施設整備の見直しや水道事業間の相互連携など、計画的な施策を推進する。その際、地震発生時の避難箇所や病院等、特に重要な施設への給水ルートを確保するため、重点的な対策を講じる。
3 事業内容
初期ダクタイル管の取替は、以下のとおり、震災時の影響が大きい路線や漏水の発生しやすい路線を優先して、順次、進めていく。
(1) 事業規模
約1,200km
(区部の初期ダクタイル管の全路線約2,200kmのうち、次の
及び
に該当する路線を取替優先路線とし、原則として、布設年代が古く漏水が発生しやすい路線から取り替える。)
水運用上、管網の骨格となり、応急給水槽や避難場所、医療施設など震災時の重要施設への供給ルートになっている重要路線(約500km)
重要路線となっていない路線(一般路線)のうち、腐食性が強い土壌に埋設された管路(約700km)
(2)事業費
約1,800億円(配水本管:約700億円、配水小管:約1,100億円)
(3)事業期間
平成17年度から本格実施(平成30年度を目途に完了)
4 事業の定性的効果
初期ダクタイル管は、都内に布設されている約25,000kmの配水管のうち、経年管に次いで取替の優先性が高い管路である。このため、取替における定性的効果として、以下があげられる。
(1)漏水の防止
管外面や連結ボルトに腐食が進行した初期ダクタイル管は、ポリエチレンスリーブに被覆されたダクタイル管に更新されるため、外面腐食による漏水や継手部漏水の発生が解消される。
(2)耐震水準の向上
異形管の管体強度が低く、継手の抜け出しによる漏水の危険性が高い初期ダクタイル管は、異形管部がダクタイル管に更新され、継手が離脱防止機構を備えた耐震継手管となるため、耐震水準が向上する。
(3)濁り水の防止
管内面に錆が付着した初期ダクタイル管は、モルタル等で防錆処理されたダクタイル管に更新されるため、赤水などの濁り水の発生が解消される。
(4)お客さまニーズへの対応
漏水や震災対策上、優先性の高い初期ダクタイル管を順次取替えることにより、「事故時・震災時に強い水道施設の整備や漏水防止」を要望しているお客さまの期待に応えることができる。
5 事業の定量的効果
本事業の定量的効果は、初期ダクタイル管の取替費用と取替による断水被害額等の軽減を比較する費用対効果分析により行った。
| 費用(C) |
136.6億円 | |
|---|---|---|
| 便益(B) | 地震時 | 58.0億円 |
| 通常時 | 128.4億円 | |
| 合計 | 186.5億円 | |
| 費用対効果(B/C) | 1.37 | |
費用(C)は本事業によって耐用年数を迎える前に取り替える管路の残存価値を現価換算して計上した。また、便益(B)は地震時と通常時を想定し、管路の被害により断水した場合の被害額や復旧工事費など社会的損失の軽減分を現価換算して計上した。
計算の結果、費用対効果(B/C)は1.37となる。
6 結論
初期ダクタイル管取替については、定性的効果の面から有効な方法であり、さらに、定量的評価である費用対効果分析からも妥当であるという結果となる。
以上より、本事業の実施は適切である。